鴎 2000年10月
鴎俳句会へ
| 鴎 作 品 選評 松田ひろむ | |
| 集団登校どの子に乗るも草の絮 石口 栄 車椅子を押しつ聞き役百日紅 山百合の一本反り身新体操 萩が背にふれて浮かれて陶狸 金属疲労の腰骨伸ばすぶどう狩 波引いて砂鳴くばかり一位の実 白石みずき 水澄むや叩いて空けるジャムの瓶 湖の駅からくり時計とサルビアと 旅にいる本音ともなく鉦叩 野火止の用水の幅蚯蚓鳴く 夏越しの恋の顛末砂時計 小平 湖 鏡台へ母の帯着せ西鶴忌 ひとりより群れていたい日ねこじゃらし モチベーションぶどう一粒ずつ消えて |
栄さん-「集団登校」の句は地味ながらあたたかい。「車椅子」も同じように作者の優しい感覚が見えてくる。「山百合」「陶狸」などは、やや機知の面白さが見えてくるが、これも一つの方法だろう。いろいろと手探りしながら、俳句の楽しさが分かって来ていることが好ましい。 みずきさん-このところ好調。「本音ともなく鉦叩」は、なかなか味わい深い。「波引いて」「水澄むや」「湖の駅」は、彼女らしい明るい作品だが、それぞれ焦点がしっかりとしている。 湖さん-「ひとりより」は実感。俳句はこうした実感を以下に大切にするかだろう。「モチベーション」(誘因・動機付け)は、外来語を使っておしゃれな句。普通は外来語は上手く生かせない場合が多いが、この場合は感性が響いてくる。 |
| 上五据え中七ゆらぐ虫の秋 菊池 志乃 息つまるほど抱えたき曼珠沙華 木の実何の実夢百度みち黙し 麻のれん濯ぎしんし伸子の味噌屋かな 女とて岩魚のかかる騒ぎかな 木谷はるか 脇付に幸便と書く地蔵盆 藍浴衣のぱりっと乾く会者定離 水鳥に避難勧告豪雨です 沿道へ垂れてはならぬ白式部 姉崎 蕗子 ギスの声「月下の俘虜」の歩き出す この街の畑に鍵ある残暑かな 地球儀のジグザグパズル蚯蚓鳴く 石口 光子 光子―「地球儀」は、もともとパズルのよ はいはいが始まりましたささら荻 夜遊びの細かき歩幅ちんちろりん |
・志乃さん―「上五据え」など、いつも俳句に真剣な志乃さんの姿だろう。「木の実何の実」「夢百度みち」と、相当内容が詰まった句だが、木の実を出して具象性がある。百度みちは「お百度参り」のそれだろうが「夢」として逆に現実となる不思議さ。 ・はるかさん―「女とて」最近は女性の釣師も多いとか。これはそんなレジャー的な釣りより、男に混じっての家族的なものかも知れない。それにしてもこう単純に言い切って一句なのだ。「藍浴衣」だからこそ「ぱりっと」だろうが、その浴衣にまつわる思い出が「会者定離」の言葉を呼び込んだのだ。 蕗子さん―「白式部」の清らかさだからこそ「沿道に」の言葉が出てきた。さっぱりとして楽しい句。「月下の俘虜」は精神病院医師だった平畑静塔の句集「吾をついに癩の躍りの輪に投ず」などの句が知られている。これは勉強家の彼女らしい一句。 光子さん―「地球儀」は、もともとパズルのようなものだろうが、最近のロシアなど国の変動がそれに輪をかけているのだろう。「蚯蚓鳴く」は思い。 |
| 天の川海底通るバス切符 古川 塔子 ブラウスを白にきめたる酔芙蓉 予報図を野分と読みし旅鞄 「マウンテンバイク貸します」秋茜 倉本 岬 血液型Aです百日紅の樹齢 ポポという坂の由来にななかまど 片寄って赤の濃くなる金魚つり 白石 菊代 一つだけよきことありし蕎麦の花 逝く夏やまだゆれているやじろべえ 萩の花虫喰い閻魔親しめり 佐々木らん 降灰の島より来る子虫しぐれ 余生にて三州奥の赤とんぼ |
塔子さん―「天の川」と海底の対比で大きな句となった。「ブラウスを白」は上手い句だがやや類型感が残る。次の「予報図」を「野分」と読むのは独自感があって好ましい。 |
| Tシャツの胸の音符の牛膝 松浦 釉 昼ちちろ道の岐れに喪の案内 潮荒れる日や隠元を摘みに海女 蝉の声木魚五十ほど並ぶ 荒井まり子 「空・寂」の潤一郎碑揚羽発つ 夏鯉の色鮮たなり晶子の碑 乗り換えの駅に釣堀昼の月 小高 沙羅 回覧版の「ひ」と「し」混じりや秋祭り 待合室のビデオは今日も熱帯魚 悪女かもブナと仲良き月夜茸 杉浦 一枝 鰯雲コンビニの傘二つ干す 湯のなかで乾いた葉音夜の秋 ブラウスは季の白無地秋暑し 能美 澄江 針に糸通す途切れぬいわし雲 鉛筆を鋭く削り秋夕焼 大多摩の名月告げる電話かな 柴田しげ子 木道を猫渡り切る花芒 天高し啄木の歌そらんじる ちひろ絵のシャツ母と子の内緒です 堀越 鈴子 十薬やこの指止まれ新老人 八重山の蝶肩に来て胸に来て 廃線の錆速み降り稲の花 松本 末生 炎天をつつんで畳む浜日傘 父母のわれより若き墓洗う 礼文島いささか過ぎし花野かな 大村 恭子 潔く捨てて新涼戻るかな この坂のなくばと思う秋土用 葡萄棚一雨ごとに色のせし 増田よし子 すいとんの具沢山なる終戦日 白萩や沼の北よりさざなみが 手作りの合わせ味噌にて新生姜 関 千恵子 一筋の風に押さるる秋の蝶 炎天や鉄骨赤く吊りあがる 風と笑む栗の実工事本決まり 工藤眞智子 ちらちら見るひそひそ話鰯雲 ニコニコ通りは映画のセット秋気澄む 花茗荷見残しなしいいつつも 小原 良子 雨音に虫の昂ぶる日暮かな 朝顔の種二三粒ねだる子よ 山脈を日毎眺める青瓢 森田 泰子 最北や雲流れるるに稲稔る 唄ありて秋風強し龍飛崎 秋暑し組体操にふんばる子 村田紀久子 ちちろ鳴く指先グーとパー運動 お台場の花火ハートと笑顔あり 東京の残暑に五臓六腑かな 木檜 和久 吊り上げるクレーンの背筋天高し 敬老の日や早く寝て早く覚む 咲き満ちて葛の色濃き長寿村 小川 侑子 また一人角地の萩を散らし行き 水引を添し便りの一句かな 湧き上がる嶺々襞雲里の秋 江川 邑節 回教の塔と知りしか烏瓜 鯖雲の影や少年浮を見る イタセクスアリスそれのみ鴎外忌 芝原 郁朗 嘘ついて葡萄の枝を眺めいる おいしさは黒紫の葡萄房 白花豆留辺蕊町の畑いくつ 沢柳たか子 硫黄山地球の懺悔聞くとんぼ 行き過ぎて戻る本屋や今日の月 大野美千代 新涼の上着の袖にふれてゆく 二尺甕すすきの束を投げ入れに 浅見 みち 満月にふと足とめし盲導犬 逝く夏の蚊取線香特売日 赤沼 美子 誰が植えし今年を香り夕化粧 台風のなかバス走る平和像 田崎十三子 寺町に協会の塔萩の花 朝採りの野菜に群れる夏疲れ 北澤むつみ 残り蚊のささやくように頬かすめ 盆踊り去年の顔に広がる輪 広井 久子 なんの鳥盆の回向に雨の朝 鉄線の色濃むらさき俳画描く 三宅 優子 「二人とも元気でいます」敬老日 野菊見て今年も行けぬ墓参り 原田多磨子 すくすくと下校帰りの曼珠沙華 |
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