鴎座同人・顧問作品

2001年8月 鴎座顧問・同人 鴎座同人
2001年8月 鴎座顧問・同人 暑気中り                    野宮 猛夫
めりはりの張り声かわす牛蛙
解禁鮎へちぢかむ男根百あまり
石を吊る庭師の笛の暑気中り
男まさりのその横顔にお盆くる
老境愉快海なき街に海鞘喰うて
                         根岸たけを
蘇生しそう鼻すじ凛として日焼
彼の部屋は施錠せしまま五月尽
南千住梅雨にし山谷詩人亡し
梅雨の沖車窓に沖縄慰霊の日
「鴎座」創刊を祝う
鴎舞う喜寿のかもめも舞わんかな
                           山中 蛍火
初夏や和讃の耳が白くなる
 じゃが咲くやしこ醜のみたて御楯となりもせで
 タンポポは日本語かしら絮吹いて
 梅雨月夜浮かれうつぼ?の歯が伸びる
 雨蛙人間にだけ薬指
                           森  白樹
忠度の菩提ますぐに梅雨鉄路
              岡部六弥太、平忠度菩提塔を郷里に
 鉄骨の青梅雨を組む町寸断
 空梅雨の六腑の胴の俳文学館
 梅雨を押す目と口はっしと鉄の女
 梅雨明けの一日で乾く鬼瓦
                          矢野おだまき
 上新粉に穀象地獄なんちゃって
 潮染みて御輿やや児の盲縞
 萍のプツプツ潰しいて無月
 おんな神輿へぶっかけ水のやるせなく
 花韮の鼻仕様もなし猫・野猫
                            乗本 真澄
 六月や底る佃島の船溜まり
 這う蟻も弥陀の使いと見る愛し
 興亡の城の空壕竹落葉
 北へ鳴り南を晴らす梅雨の雷
 余生とてなお甘辛や連理草 
鴎座同人 涼しい座  さか すみこ
大川へ一陣のかぜ涼しい座
青蔦這い昇るネットに声あがる
国道の昼顔つると雨呼んで
雨すこし都会寝入りの裸子へ
どことなく川風かえり八重山吹
平熱       松浦  釉
鴎座の福音拾ふ落し文
体温計のピピと平熱梅雨の月
新馬鈴薯に網走発の送り状
強がりのえご散りてより足の萎え
蕗を煮て亡母の齢にあとすこし
 青嵐       倉本  岬
この歳の座右の銘に樟若葉
青嵐その前その後ハンセン病
生前葬いいね日々草植える
絵ごころのあれば昼顔ここかしこ
心音の確か水母の遠ざかる

母の髪      小平  湖
膝付いて母の髪梳栃の花
赤紫蘇に体あずけて揉みにけり
「豆かんあります」佃水母の呼気吸気
玄関の向き合う路地の百合大輪
再会の白い歯白い額の花
山国の      姉崎 蕗子
すかんぽの酸っぱし夫婦いる空気
水蕗のどっさり夫の力瘤
月山の裾広がりに蝌蚪の池
山国のしっかりものや水澄まし
栃咲いて木登り地蔵みはるかす

三代      小高 沙羅
玉葱の皮剥く明日再検査
三代が草笛を吹く墓参り
桐の花帯を選びに男の眼
木下闇笑う顔文字携帯に
一人っ子いずれはだれのぶどう棚
太宰忌     白石みずき
調律師梅雨入り前の音探る
?の木の水吸う音や太宰の忌
あやとりの箒の開く梅雨の入り
蜜豆や真顔で好きと言われても
占って獅子座仕切り屋冷し酒

皮膚呼吸     石口  栄
公園の蛇口上向く薄暑かな
でで虫を覗く滝平二郎の子
梅雨晴れ間部屋壁にある皮膚呼吸
紙めくる指腹ほんのり走り梅雨
小便小僧の尿へなへなす青嵐
沖縄忌      中野 由美
ぬか漬けの今朝の濡れ色沖縄忌
おみずや水盤舎欄間舟涼しげに伝写楽
夏潮満ちて橋真ん中の浮きごころ
日蝕のコロナ閃閃らいてう忌
甚平爺にふと会釈する佃路地

古川 塔子
さくらんぼすぐ裏返るネックレス
浜昼顔スカート穿くによろけたり
朝ぼらけ猫立ち止まる茅の輪かな
浮き上がる太極拳や蝉の昼
ごじゅうご五十五歳の青柿のまま逝くはなぜ
能美 澄江
河骨や夜はコキコキと首廻す
風紋は浮き足素足ひた走る
皿盛りのゆで蝦蛄の青くに郷里の空
白南風や建て売りの屋根カラフルに
梅酒飲むオンザロックは雲の上

田原 知子
梵海のみんな仲良く夏の蝶
師の墓に耳あり六月の鳥語
堂薄暑十一面の仏頂面
川べりの工場廃れ棕櫚盛る
二輪車の補助輪とれて風は初夏
      樋口 素秋
草笛を吹き少年の貌となる
絹織るに似て幾萬の桑喰む音
缶ビール生涯貧し詩の仲間
草いきれ捨て墓いくつ村の果
リストラの青年帰る麦の秋

澤柳たか子
森洋さんを悼む
鳶仕事得意な句材梅実落つ
口かたき作業着遺影朴の花
さみだるる開運堂の袋菓子
予報図は夏色少年の変声期
初成りの瓜まるかじりミニ畑
工藤眞智子
忘れおり結婚記念日胡瓜揉み
母の忌に末弟病みぬ草いきれ
ほうたるのもういぬ故郷ヘリコプター
  美千代さん逝く
さりげなく薔薇のコサージュ直しくれ
夏椿小さき笑いに手を添えて
堀越 鈴子
黒谷の手漉用箋祭り来る
大鍋の伽羅蕗今年を折り返す
きかんきのブランコ大空漕ぐもよし
  森洋さんへ
黒南風や欅こぶしの骨拾う
史子さんの丹精の花々凍てし頬に
菊池 志乃
鴎の座句焔恵方の八月に
ひと昔地図に挟みしエーデルワイス
遠郭公輪唱ヤッケのポケットに
青蛙不法投棄車の鎮魂
メロンパンすぐ腹見せる佃猫
内田 恒道
白靴で闊歩せし日々眩しめり
「アウト・ローなど居やしないよ」蟻の言う
  円覚寺
青東風や午下の塔頭人なくて
夏安居のここに打座すか薬師の眼
万緑を睨み返して虎頭石
 虎頭石は、境内妙香池畔にある巨岩
鈴木 曜子
潮錆びの錨畑にトマト熟れ
漁具納屋古り潮風廂に立葵
大学の艇庫涼しき磨崖仏
寂れゆく港にカラフルヨット着く
島守る絆総出の真夏の葬

 山根 松於
花木槿介護の午後のけだるさと
雲の峰幼な長靴干して留守
空蝉や来し方のみに生き痴呆
あるだけの包丁研いで端居めく
泰山木花の一日の自尊心
笹川儀三郎
梅の実を玄界灘の濤にもぐ
饒舌に無関心の眼を蟇
天使浮きバロックひそか薫る風
夕焼に顔照らされて待つ時間
行く春を妻はどこまで行ったやら